大使挨拶

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駐クロアチア大使
井出敬二

 

 

2016年頭にあたってのご挨拶

 

 2016年頭にあたり,ご挨拶申し上げます。

 2014年2月27日に信任状を大統領に捧呈して,大使として1年10ヶ月余の活動を行ってきました。

 2015年6月にミラノビッチ首相が訪日しました。これは史上初めてのクロアチア首相の訪日でした。安倍総理との会談では様々な点について率直で友好的な意見交換が行われました。日本とクロアチアのビジネス関係を発展させるために協力を強化することにも合意しました。クロアチアで計画されている各種大型プロジェクトへの日本企業の参入が期待されており,実際に日本企業による大型投資案件の話し合いも進展しています。EU基金を利用した調達案件に,日本企業が実際に参入している成功例も出てきています。日本大使館としては,日本企業の高い信頼性と技術をクロアチアの官民に引き続き説明し,ビジネス関係発展を後押ししていく所存です。他方,日系企業がクロアチアでトラブルや不透明な対応に遭う事例も残念ながらあります。そのような場合には、当館からクロアチア当局に対して申し入れなどを行っています。

 クロアチア経済はようやく不況から脱し,昨年のGDPの伸びがプラスになることが見込まれています。2009年以来GDPの伸びがプラスになったことがない状況から,ようやく脱することができました。クロアチアに自動車,各種設備などの日本製品を売っているビジネス関係者に聞くと,売り上げも伸びており,景気の回復を実感できるということです。

 観光分野では,クロアチアの人気は益々高まっています。スリ,置き引き等の被害に日本人が遭い旅券を再発行してほしいとの届け出は,特に夏には毎週当館に出されています。しかし,幸いなことにこれまで日本人が凶悪犯罪に巻き込まれた例はありません。それでも安全確保のためには細心の注意が必要です。日本人がクロアチアで観光ガイド資格を取得できないという問題があるため、当館からクロアチア政府の関係部局に働きかけた結果、制度改正の動きが出てきています。

 教育・文化面では,ザグレブ大学、ザダル大学に加えて昨秋からプーラ大学でも日本語教育が開始されました。ザグレブ大学とザグレブ経済経営大学は,日本人留学生の受け入れも開始しました。クロアチア各地のオーケストラ,合唱団,バレエなどでも日本人アーチスト達が活躍しています。クロアチア人の間でも日本の武道,折り紙,俳句などへの人気が高いと言えます。日本の文化,社会についての情報をクロアチア国内で一層積極的に発信したいと思っています。そのために日本からの関係者のご来訪を期待しています。

 クロアチアはEUに2013年7月に加盟した後,旧ユーゴスラビア諸国のEU加盟を後押しする政策をとっています。ウクライナ情勢,イラク・シリア情勢,経済不況,エネルギー情勢,難民問題,テロ問題などがこの地域全体に不透明感を与えている中で,またEU拡大の展望も必ずしもはっきりしない中で,クロアチアはこの南東ヨーロッパ地域の発展のために日本との協力推進を強く期待しています。

 昨年9月以来,難民がクロアチアを通過するようになり,その規模は一日平均数千人にものぼりました。日本はクロアチアに対しては直接の支援を行っていませんが,難民が発生している地域や脆弱な国に対する直接の支援,そして国際機関を通じる支援を行っていることをクロアチアで説明しています。

 クロアチアでは昨年1月に大統領選挙(決戦投票)が,また昨年11月8日に議会選挙が行われました。その結果,国の指導者の陣容も変わってきています。しかしいずれにしても,EUとNATOのメンバーとしてのクロアチアの基本政策,そして日本との友好・協力関係を増進するという基本政策は変わっていません。そのようなクロアチアと日本は価値観を共有する戦略的パートナーとして関係を強化していくべきです。

 日本大使館は以上のとおり,日本とクロアチアの政治,経済,観光,教育・文化などあらゆる関係の発展のために活動しています。また南東ヨーロッパ地域の安定と繁栄のために日本としての協力を展開する活動も行っています。クロアチアに滞在されまた旅行される日本人への支援も行っております。日本大使館の活動は,このウェブサイトを通じてご紹介しております。クロアチアに在留している日本人の皆様には,安全・治安情報などを定期的にEメールで発信しております。 

 日本大使館の活動に対して,これからも皆様からご理解,ご意見とご支援を賜りたく,よろしくお願い申し上げます。

 

2016年1月4日
駐クロアチア日本国特命全権大使 井出敬二

 

 

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