大使館案内

2020/8/3

大使挨拶

駐クロアチア大使 嘉治美佐子

 Prema Suncu! (これ、クロアチア語で、太陽に向かって、と言う意味です)

 

 7月2日、茂木外務大臣は、グルリッチ=ラドマン・クロアチア外務・欧州問題大臣と電話会談を行いました。日本とクロアチアの外交トップの直接会談は、去年の8月14日河野大臣(当時)がザグレブを来訪されて着任したばかりのグルリッチ=ラドマン外相と会談して以来のことです。その後の一年、パンデミック、地震、EU議長国を乗り切ったクロアチアは、自由や人権、法の支配といった基本的価値を共有する日本と、今後とも協力関係を推進していくことで一致したのです。

 

 そのような中で、7月23日、私は着任して初めてテレビ出演をしました。クロアチアの国営放送HRTが、来年のオリンピック東京大会開幕一年前を記念して、特別番組を打ったのです。共演者の一人、ボートのスター、シンコビッチ選手は、「あー、ほんとなら、今日は開会式でトウキョウにいたのになあ」と明るめに言っていました。新型コロナウイルス対策でテレビ局の屋外に特設された臨時スタジオには、マテシャ・クロアチア・オリンピック委員会会長が登壇、大きなスクリーンにはコバチッチ・クロアチア・パラリンピック委員会会長もビデオ参加されました。また、人類がコロナウイルスに打ち勝った証として東京大会を開催したいと話す小池都知事も映し出されました。私からは、赴任前に挨拶に伺った森東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長から、ミライトワとソメイティを授かって激励されたエピソードを紹介しました。また、7月17日の国際オリンピック委員会総会でコリンダ・グラバル=キタロビッチ・クロアチア前大統領が委員に選出されたので、スポーツ大国クロアチアにぴったりのポストへのご就任にお祝いを言いました。

 

 オリンピック・パラリンピック東京大会は1年延期になりましたが、EUでは6月末、予定通りクロアチアが半年の議長国を終えました。世界中を覆い始めたパンデミックの影響は決して小さなものではなかったのですが、クロアチア政府は持ち前の危機管理能力を十全に発揮しました。コロナウイルスの感染率を低く抑えつつ、電子技術を駆使して多数のEU関連会議をアレンジしました。5月6日には、全27EU加盟国と、6南東欧諸国首脳の参加するビデオ会議を主催、「ザグレブ宣言」が採択され、西バルカンと呼ばれるこれら6カ国のEU加盟への道を確認することとなったのです。

 また、5月26日には、EU主催の世界のコロナウイルス対策のためのプレッジング会合(ビデオ首脳会議)が開催され、日本もクロアチアもプレッジしたのです。

 その後議長国ドイツの下、7月22日、EU首脳は、2021-27年の7か年予算とともに、復興基金「次世代のEU」という、コロナウイルスで大きく被害を被った加盟国に、欧州委員会がEUの名で集めた資金を割りふりその半分以上を無償で提供すると言う、画期的な方策に合意したのでした。これは一回きりの措置とはいえ、貿易投資で相互依存の深い欧州経済が共倒れとなるのを防いだだけでなく、EU諸国を結束させるものとなりました。しかも、EUの経済社会に気候変動対策やデジタル化という方向性を与える資金供与を想定しています。クロアチアは7か年予算と「次世代のEU」を通じて、EUから総計220億ユーロという、これまでにない額の資金を得る道を確保したのでした。

 時あたかも一院制のクロアチア議会が解散となり、7月5日には総選挙が実施され、結果、投票率は前回より低かったものの、プレンコビッチ首相率いる与党が、少数民族政党等との連立により過半数を維持できる勝利を得ました。今後、プレンコビッチ政権は、このEU資金も活用しながら、世界中の政府と同様、難しい舵取りを迫られています。ウイルスと共存する新しい日常の中で、人々をウイルスから守り、ザグレブの震災復興を進め、経済の落ち込みに対策を講じていくのです。

 

 クロアチアでの2020東京大会のテーマは、日本が日出(いずる)国であることから、Prema Suncu、太陽に向かって!です。国境を越えた行き来が大きな制約を受ける中、希望を胸に抱いて立ち向かう世界。クロアチア選手が多数参加する東京大会の実現を心から願っています。

 

 

令和2年8月3日掲載
駐クロアチア特命全権大使
嘉治 美佐子

嘉治美佐子特命全権大使略歴

東京大学経済学部卒、オックスフォード大学修士。

在英日本大使館、欧州連合日本政府代表部、在ベトナム日本大使館、国際連合日本政府代表部、国連難民高等弁務官(UNHCR)、総理官邸に勤務。外務省人権人道課長、儀典総括官、中東アフリカ局審議官などを歴任。

2012~14年東京大学教養学部教授、2014~16年在ジュネーブ国際機関日本政府代表部次席大使、2017~2019年一橋大学教授。

著書に『国際社会で働く 国連の現場からみえる世界』 NTT出版 2014年がある。