大使館案内

2021/3/9

大使挨拶

駐クロアチア大使 嘉治美佐子

 スレトナ・ ノバ ・ゴディナ (Sretna Nova Godina クロアチア語で、明けましておめでとうという意味です)

 

と、ご挨拶してから1年2ヶ月以上経ちました。2020年はパンデミックが世界を襲い、誰にとっても大変な年でした。日本が2回目のホスト国となったオリンピック・パラリンピック東京大会は、そっくり一年延期されることになりました。

 

 クロアチアは2020年前半のEU議長国を、電子技術を駆使して乗り切っていました。そんな中、3月22日、首都ザグレブ が140年ぶりの大地震に見舞われました。日本からは、安倍総理や大島衆議院議長からお見舞いメッセージが送られ、ゆかりのある企業や2020年東京大会のホストタウンから、厳しい経済状況にも拘らず、支援が差し伸べられました。この地震で犠牲となった柔道家だった少女には、山下柔道連盟会長からお悔やみのメッセージが届きました。

 

 クロアチア政府は、EUからコロナ禍復興資金に加えてザグレブ地震からの復興資金も取り付けました。年の瀬の12月29日、今度は中部地域がマグニチュード6.2の地震に襲われ、30人以上が死傷、震源地のシサク・モスラビナ県だけでも3万4千件以上の建造物が損壊しました。この中部地震に際しても、大島衆議院議長や茂木外務大臣からお見舞いメッセージが送られ、日本の企業や市民からも心のこもった支援が届いています。対策本部が立ち上げられ、被災民の日常を取り戻す作業が今も続けられています。

 

 日本が防災先進国であることは世界中に知られています。私はクロアチアのテレビと新聞から、それぞれ声をかけられて、大晦日にスカイプでN1テレビに出演、年明け1月20日にはユータルニ・リスト新聞のインタヴューを受け、常備リュックのサンプルを披露するなどして日本の防災を紹介しました。1月19日には、中部地震の震源地だったペトリニャ市のドゥンボビッチ市長、2月3日には対策本部の副本部長であるホルバット建設大臣、そして2月22日にはやはり副本部長を務めるミロシェビッチ副首相に其々呼ばれ、震災復興の相談を受けました。ペトリニャ近郊の被災したベゴビチと言う村にも案内されました。家畜と暮らす人たちが、支援を受けつつ踏み留まっていました。

 

 こうした日本への期待に応えるために、2015年に仙台市で採択された国連仙台防災枠組2015-2030を主導した竹谷公男JICA特別顧問・東北大学災害科学国際研究所客員教授にお力添えをいただき、クロアチア建設・都市計画・国家資産省との共催で、2月25日、3月3、5日と日本の知見共有ウェビナーを実施しました。講師は竹谷顧問、西川智名古屋大学教授と、林春男防災科学技術研究所理事長です。こちらにはザグレブ大学の地震研究者や復興本部の公務員など、50名以上の参加が得られ、熱心なフォローアップの要請も来ています。

 

 ザグレブ近郊のヴェリカ・ゴリツァというところにある音楽学校では、生徒たちが、ペトリニャ地震被災者の為に、東日本大震災の復興支援ソング、「花は咲く」クロアチア語版をオーケストラ、合唱、ダンスで収録した動画を作ったそうです。「コロナに加えて地震というこの厳しい時に、十年前の皆さんの災難に思いを馳せます、この歌は、私たちの心を一つにし、何時も未来に向かせるのを助けるのです」というお手紙とともに、日本の皆さんに届けてほしいと大使館に送ってくださいました。クロアチア語で流れる花は咲くヴィデオ、訪れてみてください。(動画はこちら

 

 うちの大使館は、ズリニェバツ公園と言う真ん中に噴水がある美しい広場の一角にあります。10年前の東日本大震災ではクロアチア政府から三百五十万クーナの支援があった他、ザグレブ市民が蝋燭や花を持って大使館に慰問に立ち寄ってくださいました。そして、この広場からすぐ近くの丘にある大聖堂では、毎年この時期に、犠牲者の追悼ミサが挙げられて来たのです。去年のミサは、3月8日正午でした。

 

 丁度その二週間後の日曜日、ザグレブを襲った地震により、大聖堂の尖塔のてっぺんが落下、荘厳な内装も大きく破壊されました。早朝であったこと、コロナ対策のロックダウンが始まっていたことから人的被害がなかったことが、せめてもの救いでした。去年のミサでは大聖堂を埋め尽くす人々の歌声が高い尖塔に響いていたことを思い出すと、地震が二週間早く来なくてよかったとの思いを禁じ得ません。

 

 今年はコロナ対策上大聖堂の追悼ミサは見送られます。それでも、十年間のお志に対し、主祭のクフティッチ司祭に外務大臣から表彰する運びとなり、3月11日にささやかな伝達式を行うことにしました。こうして感謝の気持ちを伝えつつ、3月22日にザグレブ地震1周年を迎えるクロアチアのより良い復興、build back better に寄り添って行きたいと思うのです。

 

 スレトナ・ノバ・ゴディナは、Streta nova godina と言うように、nova godina のn とgを小文字で書くと、良い一年になりますように、と言う意味になるそうです。2021年がそうなるように、祈りをこめて邁進します。

 

令和3年3月9日掲載
駐クロアチア特命全権大使
嘉治 美佐子

嘉治美佐子特命全権大使略歴

東京大学経済学部卒、オックスフォード大学修士。

在英日本大使館、欧州連合日本政府代表部、在ベトナム日本大使館、国際連合日本政府代表部、国連難民高等弁務官(UNHCR)、総理官邸に勤務。外務省人権人道課長、儀典総括官、中東アフリカ局審議官などを歴任。

2012~14年東京大学教養学部教授、2014~16年在ジュネーブ国際機関日本政府代表部次席大使、2017~2019年一橋大学教授。

著書に『国際社会で働く 国連の現場からみえる世界』 NTT出版 2014年がある。