大使挨拶
2015年頭にあたってのご挨拶
2015年頭にあたり,ご挨拶申し上げます。
昨2014年2月27日に信任状をヨシポビッチ大統領に捧呈して,大使として10ヶ月余の活動を行ってきました。その間,政治,経済,教育,文化などの幅広いクロアチア官民の人々と交流し,彼らの意見を聞くとともに,日本からの見方を説明し,今後の協力の発展の可能性を探求することに努めてきました。また,クロアチアの各地を訪問する機会に恵まれました。更に旧ユーゴスラビア諸国の7カ国全て(クロアチア,スロベニア,セルビア,ボスニア・ヘルツェゴビナ,マケドニア,モンテネグロ,コソボ)とアルバニアを含めた近隣諸国も訪問することができました。この地域全体の安定と繁栄の実現のためには,まだ様々な課題と挑戦があり,そのために日本が協力できることも沢山あると強く感じました。
2014年は日本・クロアチア関係発展の面で有意義な年でした。双方から閣僚(日本から谷垣禎一法務大臣(当時),クロアチアからはブルドリャク経済大臣,ロレンツィン観光大臣,マラス中小企業大臣)の訪問が行われ,また牧野たかお外務大臣政務官がクロアチア政府主催の国際会議(「クロアチア・フォーラム」)に参 加され,日本が南東ヨーロッパ諸国との関係を一層強化していくとの方針を説明されました。クロアチア側も日本が南東ヨーロッパの安定と繁栄のために貢献することを大いに期待し歓迎しています。本年も引き続き政治指導者達の交流が活発に行われることが期待されています。
経済面では,クロアチアでは残念ながら不況がなおも続いています。2013年7月に28番目のメンバー国としてEUに加盟したクロアチアですが,2009年以来GDPの伸びがプラスになったことがない状況が続いているために,EU加盟の経済的効果を感じられないというフラストレーションがクロアチア国内にあります。各種予測によれば2015年はGDPの伸びがプラスに転じることが期待されています。クロアチアで計画されている各種大型プロジェクトへの日本企業の参入が期待されており,実際に日本企業による大型投資案件の話し合いも進展しています。EU基金を利用したプロジェクトに,日本企業が参入する機会もあります。日本大使館としては,日本企業の高い信頼性と技術をクロアチアの官民に引き続き説明し,ビジネス関係発展を後押ししていく所存です。
観光分野では日本人のクロアチア人気は益々高まっています。クロアチアは官民挙げて日本人のクロアチア来訪を大歓迎しています。毎年クロアチアを訪問する日本人は数万人に上ると見られています。地中海クルーズ船でドゥブロヴニクを訪問する日本人観光客だけでも年1万人にのぼるということです。従来は団体観光客が主力でしたが,今後は個人観光客の来訪も期待されています。他方,クロアチア人が日本に行く機会も少しずつ増えています。クロアチア人がもっと日本を訪問するように,日本の魅力をアピールしていく所存です。観光分野での協力は両国にとりwin-winの関係をもたらしますので,日本大使館としてクロアチアの観光関係部局との協力を強化しているところです。
教育・文化面では,2014年にはザグレブ大学での日本語・日本学教育が10周年を迎え,またザダル大学でも日本語教育が開始されました。プーラ大学も日本語教育開始に向けて準備を進めています。クロアチア各地のオーケストラ,合唱団,バレエなどで日本人アーチスト達が活躍しています。クロアチアで和食はまだ普及していませんが,少しずつ人気が出てきており,2014年には私たちが把握しているだけでも和食店がクロアチア国内で少なくとも6店開店しました。和牛の輸入も開始されました。日本の文学・図書もクロアチア語に翻訳・出版されています。武道,俳句,折り紙などの伝統的な日本文化も引き続き盛んです。日本大使館は教育・文化面での関係強化のためにも尽力しています。
クロアチアはEUに2013年7月に加盟した後,旧ユーゴスラビア諸国のEU加盟を後押しする政策をとっています。ウクライナ情勢,イラク・シリア情勢,経済不況とエネルギー情勢などがこの地域全体に不透明感を与えている中で,またEU拡大の展望も必ずしもはっきりしない中で,クロアチアは日本との協力推進を強く期待しています。
2014年,クロアチア東部においては,隣国のボスニア・ヘルツェゴビナ,セルビアと同様に大洪水が起きました。日本の官民から行った支援に対しては,クロアチア政府からも謝意が表明されました。
クロアチアでは本年1月11日には大統領選挙決戦投票が,また年内に議会選挙が行われますが,EUとNATOのメンバーとしてのクロアチアの基本政策は変わらないと思われます。そのようなクロアチアと日本は価値観を共有する戦略的パートナーとして関係を強化していくべきです。
本年は第二次世界大戦終了後70周年の年ですが,クロアチアにとっては1995年に戦争が終わってから20周年の年にあたります。戦争に伴う様々な問題を克服する課題についてクロアチアの人々とよく意見交換しますが,日本とクロアチアは共感し支援しあえる関係にあると感じます。
日本大使館は以上のとおり,日本とクロアチアの政治,経済,観光,教育・文化などあらゆる関係の発展のために活動しています。また南東ヨーロッパ地域の安定と繁栄のために日本としての協力を展開する活動も行っています。クロアチアに滞在されまた旅行される日本人への支援も行っております。
日本大使館の活動に対して,皆様からご理解,ご意見とご支援を賜りたく,よろしくお願い申し上げます。
2015年1月5日
駐クロアチア日本国特命全権大使 井出敬二