1月15日,井出大使はブコバル市にあるブチェドル文化博物館を視察しました。
ブチェドル(Vucedol)文化は,紀元前3000年から紀元前2500年頃に栄えた文化です。19世紀以降,ブコバル市近くの遺跡の発掘・研究が進み,ブチェドル文化博物館(クロアチアの国立博物館)が昨年7月にオープンしました(写真1,2)。
ミレラ・フティネツ館長の説明は以下の通りでした。また日本人の訪問を大歓迎するとのメッセージもいただきました。(以下の写真は同博物館のご厚意により提供・許可を得て掲載するものです。)
●ブコバル市周辺には紀元前6000年には人が住んでいた。ブチェドル文化はヨーロッパの最も古い文化の遺跡であり,人類の歴史を知る上で非常に貴重なものでる。トロイ文化と同じ頃の文化であり,トロイ文化と比較することができる。ブチェドル文化をいわば「ヨーロッパのトロイ」と呼ぶこともできる。
●ブチェドル文化はブコバル市周辺が中心であり,次の周辺諸国にも広がっていた:チェコ,スロバキア,オーストリア,ハンガリー,ルーマニア,スロベニア,イタリア,ボスニア・ヘルツェゴビナ,セルビア,モンテネグロ,コソボ,アルバニア,ギリシャ
●ブチェドル文化を作ったのは,アジアから移住してきた遊牧民族だと考えられている。
●ブチェドルはメソポタミアとも何らかの交流を持っていたと考えられる。
●有名な鳩の形をした土器(「ブチェドルの鳩」,ザグレブ市の考古学博物館が保存している。同博物館のサイトに写真が掲載されている。)は,シャーマンが祭祀の際に利用したものと考えられている。この「ブチェドルの鳩」は完全な形で発見されたものは一つしかないが,それ以外に首の部分の破片が発見されている。
●土器が発見されており,そこには四つの季節に星座がどのように見られていたかを示す絵が描かれている(写真3)。また紀元前2900年頃に,おそらく生け贄として埋葬された人体は,星座の形を模した形に手足が曲げられている(写真4)。ブチェドルでは6つの星座が知られていた。他方メソポタミアでは4つのみであった。
●青銅器の利用は世界でも最も早い時期から行われ,ブチェドルにおいて青銅の利用が開始され,それがギリシャ等に伝えられたと見られる。実際ブチェドル文化が栄えた地域の周辺の鉱山から青銅器製造のための原料を入手できた。
●発見された種々の物から,4つの車輪を持つカート(写真5),舟(写真6),衣服(写真7),靴(写真8),住居(写真9)を再現して,博物館に展示している。ブチェドルの靴は左右が異なるものである。ヨーロッパでは近代軍隊が左右異なる靴を採用したが,それ以前は左右同じものであった。当時の家のドアの幅の大きさは,現代の家のドアのサイズと同じである。ビールも当時造っていた。