1月28日,井出大使はザグレブ大学理学部地球物理学科地震学研究室を訪問し,
ザグレブで地震が起きる可能性について説明を受けました。
イヴォ・アレグレッティ教授(写真1左端),ズビェズダナ・クライチ教授(写真1右から2番目),マリヤン・へラック教授 からの説明は以下の通りでした。
● 今後50年以内にザグレブでマグニチュード6.0以上の地震が起こる確率は約10%ある。その場合,大きな被害がザグレブで出る恐れがある。
● ザグレブ市内にある建物については,1962年のスコピエ地震以降に建てられた建物については地震の対策がある程度なされている。また近年建てられた建物についてはEUの基準に合わせられているため比較的安全であるといえる。
● クロアチアでは紀元前373年に大地震があったと記録が残っている。その後1880年にかけて数回大規模地震が発生している。1667年4月6日にはドゥブロブニクでマグニチュード7.4の地震が発生し,その後津波があり死者は約3千人,行方不明者は約4千人であった。1880年にはザグレブでマグニチュード6.3の地震が発生し3830の建物が破損したが,当時3万人の人口のうち死亡したのは2~3名にとどまった。
● 2009年にはイタリアのラクアで同じくマグニチュード6.3の地震が発生していて,この地震では72,000人の人口のうち308人が死亡し2万の建物の20.8%が破損した。この例から同様の地震がザグレブで発生した場合は,現在のザグレブ市民が約80万人と1880年当時の25倍もあることから,2~3名の死者でとどまるということはなく,多くの死傷者が予想される。以上の情報は,クロアチアの関連当局にも報告している。
● 1995年にはドゥブロブニクでマグニチュード5.0の地震が,翌年1996年にはストン(ドゥブロブニクから30㎞)でマグニチュード6.0の地震が発生した。
● ザグレブ大学の有名な地震学者であるアンドレア・モホロビチッチ氏(1857~1936)は,地殻とマントルとを区別する重要な面であるモホロビチッチ不連続面(モホロビチッチ氏の名を取って命名)を発見した。我々の校舎には現在も同氏の使用していた机や地震観測器,ノートなどを保管している(写真2,3)。
● ザグレブの地震研究所は1861年にザグレブに設立され,以来1948年にザグレブ大学の一部となった今も同じ場所で観測を続けている。
● クロアチア各地にある観測器(現在17カ所)から情報が研究所に送られ,その情報を研究所が各機関に提供している。
本訪問には小原駿当館インターンが同行しました。